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センターの6次化事例
2018年1月9日

『海苔養殖に魅せられ石巻へ移住、海苔漁師への弟子入りを経て独立し、海苔の加工販売事業を創業したい』


事例9


 

風間水産

代表 風間 亮佑 さん

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『海苔養殖に魅せられ石巻へ移住、海苔漁師への弟子入りを経て独立し、
 海苔の加工販売事業を創業したい』

      事業者:風間 亮佑 さん (石巻市水明南)

      販売業:海苔加工品販売

    主な販売先:飲食店

 6次産業化への取組:創業資金の確保のため、補助制度の申請に取り組む。
          また、海苔の加工商品のテスト販売を行いニーズ調査
          を行う。

   取組後の成果:補助制度を活用し、海苔の加工商品販売事業を創業
          した。

 

 

※石巻市6次産業化・地産地消推進センターを以下より「6次化センター」と表記いたします。

 


6次化センターへのご相談のきっかけ


『震災復興ボランティアで訪れた石巻で、海苔の養殖現場に居合わせ感銘を受ける。地元愛知県で就職したが、石巻での経験が忘れられず転身を決意した』

私にとって漁師はテレビの中の存在で、朝が早く重労働であるというイメージから、誰でも就ける職業ではないと常々思っていました。

しかし、大学在学中震災復興ボランティアで石巻を何度も訪れた際に、海苔の養殖現場に居合わせ、海の仕事の面白さを漁師から見聞きしたことで魅力を感じるようになりました

海苔漁師は、限られた漁場や設備の中でいかに水揚げ量を増やせるかが腕の見せ所で、“自身の努力次第で結果を出すことができる点”が面白いと感じました

大学卒業後地元で就職しましたが、この面白さが忘れられず、海苔漁師に弟子入りすることを決意し石巻に移住しました

よく都会から田舎に移住したきっかけを聞かれますが、石巻の魅力に惹かれてというよりも、自身の力を試してみたいと思わせたきっかけが石巻にあったということです。

1年間漁師の元で海苔養殖の修行を行いましたが、独立をして自分がどこまで出来るのか挑戦したいと思い、創業について6次化センターへ相談しました

 


6次化センターへの支援希望内容


『海苔の加工販売事業を行うための計画作りや、販売する商品のブランディングをしたい』

風間さんの相談内容は、

①創業のための事業計画や資金計画作りのサポートをしてほしい。

②海苔の加工販売を行うための設備費や運転資金に活用できる補助制度を紹介してほしい。

③販売する海苔製品(バラ干し海苔)のブランディングや販売促進のサポートをしてほしい。
ということでした。

 


風間さんと6次化センターの取り組み内容


『創業資金の確保と事業経営ノウハウを享受した』

バラ干し海苔の加工設備や事業運転資金に活用できるよう、石巻市創業者支援補助金*1の申請をサポートしていただきました。

申請書作成時には、海苔の収穫時期以外の操業を考慮した事業計画や資金計画書の作成のために専門家の方から丁寧なヒアリングを受けました。

私一人で申請書類の作成を行うのは困難だったと思いますので、第三者の方に色々なアドバイスをいただきよかったと思います。

初めての創業でしたので、商品ブランドづくりのためのマーケティングやブランディングの方法も教えていただきました。

具体的には、商品のターゲット設定のための客層イメージを具体化する方法や、モニターを集めた品評会の活用を学びました。

*1「石巻市創業支援補助制度」とは

  石巻市の産業の活性化と、雇用確保を目的とした補助金です。石巻市で新規創業 

  を行う事業者、中小企業者等が、代表者の世代交代を機に業態転換や新分野進 

  出に取組む第二創業を行う事業者が対象となります。

 


6次産業化に取り組んだ成果


『6次化センターへ相談当初に思い描いていた結果とは変わったが、創業支援補助制度の活用で創業に至った』

6次化センターへ相談した当初は、海苔の加工からパッケージングを自身で行うための加工設備の導入や輸送車両等の購入を検討していましたが、金融機関からの融資や補助制度の活用だけではやはり金銭的に厳しいものがありました。

しかし、こうした状況においても事業計画の作成を支援していただいたことで、運転資金の融資を受けることができ、その結果創業する事が出来たため、6次化センターには感謝しております。

現在は、委託製造という形でバラ干し海苔の加工とパッケージングを他事業者へ依頼している状況です。

相談当初に思い描いていたような仕入れ、加工、販売を自身で手掛けるという計画をすべて実現することはまだできていませんが、6次化センターへの相談が行動のきっかけになったため、相談して良かったと感じています

海苔の貯蔵タンク
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海苔の洗浄設備
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『気軽に相談できる場所があるだけでも、心の支えになった』

6次化センターは、小さなことでも、どんな話でも気軽に相談でき、いつでも耳を傾けてくれる存在として、石巻地域の生産者を支えていると思います。

私が創業した際にも、何が課題かも分からないような時期から相談に乗ってもらえました。

そのことが、これまでの苦労を乗り越えることができた最大の要因だと思います。

初めての取り組みには大きな不安がついてまわるため、その一番最初の不安を取り除いていただいた存在として、6次化センターには感謝しております

現在は、6次化センターの支援ありきでは自分の力で自社経営を担うことが出来なくなるという考えもあり、あえて一個人としてのお付き合いにとどめています。

6次化センターの良さは、そのサポートによって支援を受けた事業者の売上の変化で評価するべきではないと思います。

私のように創業した者は、創業後も継続的に6次化センターの支援を受けることが理想とは思いますが、結果として売上を上げられるかはその人の努力次第だと私は思うのです

相談者が6次化センターのアドバイスを実践する努力ができたかが売上げの向上には重要であって、6次化センターの成果として認められるのはお金ではないと思います

 


6次産業化への取り組みで苦労する点


『積極的に営業活動を重ね人脈をもっと拡げるべきだった』

現在は、私の故郷の愛知や石巻地域の飲食店でバラ干し海苔を取り扱っていただいております。

石巻に移住後、すぐに海苔漁師へ弟子入りし創業に至りましたが、もう少し石巻地域での人脈を拡げておくべきだったと思います

販路開拓のために展示商談会などへ頻繁に出展することも大事ですが、私は商品の価値や使用感を十分判断していただいた上で取り扱っていただきたいと考えますので、私の商品に興味を持っていただいた方からお声を掛けていただいて商談が始まることが多いです。

以前から、営業を重ねて人脈を拡げるというのが苦手なので、積極的に営業活動を行ってきませんでしたが、昔からの縁を大切にする石巻地域の特色を考えると、創業当時から営業を重ねて多くの方々と交流を持っておけばよかったと感じます

 


販売商品への想い・こだわり


『石巻の海苔本来の魅力を伝えるためバラ干し海苔にこだわった』

私がバラ干し海苔に興味をいだいたのは、全国的にも珍しい加工法で作られているためです

板海苔や海苔の佃煮などの通常の海苔製品は、一度海苔の原藻をミンチ状にします。

バラ干し海苔の場合は、ミンチにせずに荒切りして乾燥させる事により海苔本来の歯ごたえや風味を残したまま味わうことができるのです。

海苔の葉肉の厚さや硬さを楽しめるのは、このバラ干し加工が一番だと思います

また、調理する方自らが調理方法を考えられることも売りの一つだと考えます。

色の黒さや葉の厚さにこだわった原材料で作った商品ですので、この商品を通して石巻の海苔本来の魅力を多くの方に知っていただきたいと考えています。

商品名は「美味干しのり」
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海苔の異物選別機
【1】風間水産さん④hp用

 

『バラ干し加工に適した原材料を厳選している』

バラ干し海苔の特徴は、板海苔と違って立体的で存在感があることです

どんな料理に使用しても溶けるということがありませんが、そのような海苔にするには条件があります。

板海苔は柔らかいほうが好まれますので、「一番摘み」と言われる最初に育った海苔芽を使用します。私が仕入れているバラ干し用の原材料は、「三番摘み」のものです。

「一番摘み」は柔らかく、荒切りにした際に形が崩れ粉のようになってしまいますが、「三番摘み」は繊維がしっかりしていて粉にはならないので非常にバラ干し海苔に適しています

また、「三番摘み」以上に育ってしまうと固くて食べられません。

これは、試作や試食を重ねて分かったことです。

どんな料理に使用しても存在感がある 
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天ぷらにしても溶けることがない

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6次産業化を検討している方々に伝えたいこと


 

『6次産業化を行う前に、自身の生産物の評価を知るべきである』

6次産業化は、今までスポットの当たっていなかった未利用品などに付加価値を付けて所得向上のために活用するという点では、もっと多くの1次産業者が活用できる考え方だと思います

ですが、6次産業化に取り組む前に、ぜひ一度考え直してほしいことがあります。

6次産業化は、今まで農水産物の生産にのみ携わっていた人が自ら加工や販売も行うものですから、作業が増える分だけ人の手がかかるということを理解し、従業員の雇用も視野に入れた計画を立てたほうが良いと思います

なぜかと言うと、人件費が増えるほど6次産業化による利益の恩恵を受けにくくなる場合があるからです。

また、農水産物の付加価値向上に取り組むことも大切ですが、市場価格よりも高価格で取引されている生産物と自身の生産物の評価の違いについて日々追求する姿勢を見失わないようにして欲しいと思います。

高値で取引される生産物には、生産者の並大抵ではない工夫があると思います

どうしたら高価格で取引されるのか、なぜ自身の生産物が安価で取引されてしまうのかを理解しない上で6次産業化に取り組むことは、1次産業者としての生産活動をおろそかにしているとしか思えません。

力をかけるべきところがまず違うのではないかと私は感じてしまいます。

価値の目利きができるようになってから、初めて6次産業化に取り組むことを考えて欲しいと思います。

石巻市万石浦の様子
【1】風間水産さん①-2hp用【1】風間水産さん②-2hp用

風間水産 代表 風間 亮佑 さん
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