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センターの6次化事例
2018年10月24日

『ホップを地域のコミュニティツールとしてみんなで育てたい』


事例16


一般社団法人 イシノマキ・ファーム
高橋 由佳 さん (石巻市北上町)
タカハシ様_右から2

 

『ホップを地域のコミュニティツールとしてみんなで育てたい』

事業者:高橋 由佳 さん (石巻市北上町)

主な販売先:石巻ASATTE(石巻)、IRORI石巻(石巻)、
      Tokyobike Rentals Yanaka(東京)、新虎小屋(東京)
      ※巻風エール(クラフトビール)取扱店

6次産業化への取組:ホップを使った商品開発。
          Ex)巻風エール(クラフトビール)
             ホップシロップ(開発中)

取組後の成果:ホップをきっかけとして、遠方からも石巻へ足を運んで
       くださる方が増えた。
       これまであまりかかわることのなかった方たちとも繋がり、
       ネットワークが広がった。

 

※石巻市6次産業化・地産地消推進センターを、
 以下より「6次化センター」と表記いたします。

 


6次化センターへのご相談のきっかけ


『ビール以外の「ホップ」の魅力を広めたい』

 現在、ここ北上町でホップの栽培を行い、クラフトビールの醸造をしています。一般的にホップと言えばビールですが、「ビール以外のものでホップ商品を開発したい」と思ったのがきっかけです。商品開発で実績のある専門家の方に相談した方が、商品価値が高まる開発ができるのではないかと思い相談しました。

 みなさん良く知っている「ホップ」、実はハーブの一種で、「西洋カラハナ草」とも呼ばれています。このカラハナ草ですが、実はここ北上町に自生しており、これをツールに地域の活性化の一助になればと思い、取り組みを始めました。ホップについて、よく調べていくと、ホップは不眠症や更年期障害への効能があるという文献などもあるようで、ヨーロッパではシロップやハーブティー、アロマオイルといった多種多様に使用されていることが分かりました。

 そこで、ホップそのものにもっと価値を持たせ、ビールだけではないホップの魅力を広めたいと考え、ホップの新しい可能性にチャレンジしています。

 


高橋さんと6次化センターの取り組み内容


『大人の味「ホップシロップ」をつくりたい』

 現在は、センター支援員の方と、ホップシロップのテスト生産を行っています。ホップの香りと苦みをいかしたシロップです。他の産地では、甘味のあるシロップを作られており、かき氷などにかけて食べるのですが、ここで試作しているのは、リキュールやドレッシングなどのエッセンスに使っていただくことを想定した大人向けのシロップに仕上げようと思っています。

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試作中の「ホップシロップ」

 
 また、石巻で開催されたリボーンアートフェスティバル内のイベントでホップ料理(ホップソース、ホップ味噌、ホップのフリッター等)をシェフの方に作っていただきました。どんなものかと言うと、ホップと生クリームとバターで作った「ホップソース」を豚肉のソテーにかけたものや、ホップの苦味を活かしたばっけ味噌ならぬ「ホップ味噌」、またフィッシュアンドチップスをもじり「フィッシュアンドホップ」といったホップのフリッターなどです。どれも大変好評をいただきました。

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ローストオニオンの上にホップソースをのせたメニュー
リボーンアートフェスティバルで振舞われた

 


6次産業化に取り組んだ成果


『地域のコミュニティツールとしての「ホップ」の役割が見えてきた』

 「地域を元気にするための地域のコミュニティツール」としてホップの商品化を考えたいという思いからこの一連の取組をスタートさせました。インターネットなどで、どこでも手に入るものにはしたくなかったので、ここでしか買えない、さらにはここでしか体験できないという価値を付加するよう構想を練りました。結果的に、「ホップを見たことがないから見に行ってみたい」というご連絡を頂き、県外からも石巻まで足を運んでくださる方が増え、さらにその方たちがお友だちを連れてまた遊びにきてくださったりしています。こうやって地域の交流人口が増えていく様子を見ていると、「地域のコミュニティツール」としてのホップの役割が少し見えてきたように思います。

 また、支援員の方は、私たちがなかなか出会うことのないような方との広いネットワークをお持ちで、様々な方との出会い、繋がりが広がったこともこの取り組みの大きな成果です。

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ホップ圃場の様子。これを見るため、足を運んでくださる方も増えた。

 


6次化への取り組みで苦労する点


『コミュニティツールとしての役割と、収益性などのバランスが難しい』

 ホップを「地域のコミュニティツール」とした一方で、先行して作っていた「巻風エール」における収益性、販売計画、資金調達など、中長期的な計画を綿密に練ることができていませんでした。その中で、多方面から嬉しいオファーをいただきますが、現在は「醸造量を増やしていくべきか…」「ラインナップを増やすべきか…」はたまた「増やすのではなく“限定”の中での生産を続けるべきか…」と悩んでいるところです。

 また、ホップシロップはそれ自体があまり市場に出回っていないものなので、比較するものやデータがなく、試行錯誤しています。
 今後はこういったところにこそ、専門家の方のご意見を取り入れていけたらと思っています。

 


販売商品への想い・こだわり


『いろんな方にかかわっていただく中で商品を成長させていきたい』

 たくさんの方にかかわっていただくプロセスの中で、商品を仕上げていきたいという思いがあります。ネーミングや収穫など、地域の方だけでなく、首都圏からお越しいただく方など、いろんな方々にかかわっていただきたいと思っています。「あの時私が採ったホップがビールになったんですね!」と自身がかかわったものが商品として出来上がると、みなさんとても喜んで、商品への愛着を持ってくださいます。こういったかかわりの中から生まれてくるものを商品にしていく、それをこれからも大事にしていきたいです。

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農薬を使わずに栽培された石巻産ホップを使用して作った「巻風エール」というクラフトビール。震災後にみなさんにエールをいただき、今度はこちらから皆さんにエールを贈る番ということで石巻から新しい風を巻いて、つながって乾杯をしたいという願いをこめた商品。

 


6次産業化を検討している方々に伝えたいこと


『外からの視点で気づくこともある どんどん相談してみてほしい』

 みなさん、まずは気軽にどんどん6次化センターへ相談されてみるといいかと思います。実は私も、最初は「専門家を派遣します」と言われ、少し構えていました。でも、いざ始まってみると、センターの方も支援員の方も、私たちの歩幅や身の丈に合わせた伴走型で進めてくださったので、とても安心しました。常に私たちの目線に合わせて、多面的にアドバイスをくださり、とても頼りにしています。

 また、6次化センターへの相談をきっかけに、見えていなかった自分たちの商品の価値に気づかされました。「自分が作っているトマトはこれしかない…」「加工品って言ったって漬物くらいしかないし…」「どうせうちのは…」と皆さんとても謙遜されます。しかし、実は皆さん、本当に魅力あるものをたくさん作っておられます。ただ、作られている方自身の視点からは、本当の商品価値が見えないこともあります。外からの目線を入れることで、視野は広がります。ぜひ、みなさんもまず6次化センターへ相談されることをおすすめします。

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イシノマキ・ファームで運営している宿泊施設「Village AOYA」
築約120年の古民家をリノベーションしたゲストハウス。
ここでは、手軽な日帰り農業体験、1泊2日農業体験(素泊まりプランもあり)から、長期のファームステイ、就農相談まで行える。

 

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AOYAのリビングに飾られている「巻風エール」
農業を通した交流が行われるAOYAの象徴でもある。

 

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